Interview with
JOE HASHIMOTO Gohemp
加速しているように感じる意識の変化
なぜ、その服を好んで着るのか?
このヘンプ素材を20 年以上に渡り続けている
〈Gohemp〉代表の橋本さんに現状を伺った。
持続可能な無限の可能性を秘めた素材、
新世紀に入り衣食住がまわりはじめている。
- ―― ヘンプ素材との出会いを教えてください。
- 日本では縄文時代から始まり、着物などにも使われている古来からあるものです。ヘンプで編まれた生地に出会ったのは、93 年にGOWEST の制作で中国に行っていたときでした。当時は中国では亡くなった方に着せるものとして使われていたものだったので、これを使って服を作りたいと言ったら、現地の人には引かれましたね。でも、その後に気づいたのですが、亡くなった人に着せているということは、消臭、防虫、速乾などの効果があって、昔からの知恵が受け継がれていたものでした。人類最古の服とも言われているほどです。
- ―― その当時の素材は現在と比べて如何でした?
- ざらっとはしていたけど、着物としても使われていたので着心地は当時からあまり変わっていません。ただ、近年の技術の向上で新たなヘンプ生地を作ることができています。春夏ではヘンプとペットボトルからリサイクルした糸を混紡した生地(P68-P69 掲載)などもそうです。
- ―― なぜヘンプ素材なのでしょうか?
- ヘンプを使う理由の多くを占めているのは、素材の特性です。吸湿、速乾性に優れていて、繊維としても非常に強い。さらに無農薬で年3回も収穫できて環境負荷も少ない。また、荒れた土地でも” すくすく” 育つということで、昔から赤ん坊に纏う柄も麻模様になっています。実は日本人にとっては古くから付き合いのある素材なんです。
- ―― ヘンプ素材を扱う問題点はありますか?
- 日本で古来より麻というと大麻を指す言葉だったんですが、主に繊維用に品種改良された大麻を欧米に倣って「ヘンプ」と呼んで区別しています。実は洋服の品質表示で「麻」と書けるのはリネンとラミーの2 種類だけなんです。日本での本来の麻であるヘンプは入っていません。ここ数年で表記は植物繊維(ヘンプ)と変わりましたが、それまでは指定外繊維という扱いでした。それに生地の価格では、リネンやラミーと比べてヘンプが一番高いものでもあります。
- ―― リネンやラミーの方が高級素材に感じている人は多いと思います。
- その認識も変わっていってほしいですね。はじめた当時はヘンプという言葉も通じなかったほどでしたが、現在ではブランドの衣食住をコンセプトにヘンプを知ってもらえるようになってきました。
- ―― 直営店に隣接するマルゴデリエビスでもジュースからヘンプフードも扱っていますね。
- 食べるという文化は欧米から広まってきていて、CBD もそうですが、プロテインやオイルなど種類も増えていますね。マルゴデリエビスではジュースにヘンプが入ったメニューがあって、食でもヘンプは体に良いということを広めています。来店される方は健康を気にされている女性が多く、服とは少し違うお客さん層になっています。
- ―― 食に興味を持った人も増えていますね。
- そうですね。それに衣食住の「住」だとフランスを中心に壁材などにヘンプを使うようにもなっています。直営店のjuzu の壁もそうなのですが、海外では「食」の次に「住」に注目が集まっています。中国のヘンプの生産量をフランスが抜いたほど現在では勢いがあります。直営店を作ったのが11 年前で、10 年かけて乾いていく素材だと聞いていたのですが、現在も店内はコンクリートの壁と比べると、空気が浄化されているように感じることができます。これがヘンプの土壁が呼吸する壁と言われる所以です。それに、音との相性も良いのが特徴です。教会などでも使われているほど、ヘンプの壁は音が心地よく聴こえるようになります。
実際に、3.11 の地震以降に節電意識の向上を目的としてスタートした、直営店での生音ライブで歌ってくれたミュージシャンたちも音が良いと言ってくれました。
- ―― 欧米で起きている新しい循環に早く気づいてほしいです。
- このままでは日本は遅れをとってしまうと思うし、本来の地球環境にとって循環できる素材だということについて考えてほしいですね。ヘンプの素材も進化していて、ヘンプファイバープラスチックという土に還るものもできていて、可能性は多く秘められていると思います。欧米車のBMW やベンツなどはボンネットの内側にヘンプファイバープラスチックを使っています。
- ―― 10 年前はフェスなどが関連した人たちが多かったと思います。現在はどのように変わっていますか?
- ドープな文化も大事で、26 年間でフェスなどのシーンには浸透させてもらったと思っています。今はヘンプが良いものだということを、もっと多くの方に地道に広めています。また、食や住も近年では法律が改善され欧米を中心に盛りあがっているので、日本でも食から服を知るようなお客さんも増えてきています。これは続けてきたからこそだと思っていて、衣食住が共存するようになりました。うちのブランドを通じてヘンプの良さを知ってもらって、地球環境に興味を持ってもらえる入り口として続けていきたいと思っています。
ヘンプとリサイクルペットボトルをミックスさせた生地は柔らかく、天然素材の風合いが強い高品質な着心地。ヘンプコットンよりも強度が増しているので、育てるウェアとしても抜群のシリーズ。
*このインタビューはKiNARI vol.22から転載させていただきました。
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direction. Taishi Hikone
photographer. Shouta Kikuchi
special thanks. Komi